出典:Kindle書籍
おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密
著者:高井浩章
もともと、著者が当時小学生だった子供たちに向けて書いたお話なので、とても分かりやすい内容です。だからと言って子供向けというわけではなく、私のようなアラフォー世代が読んでも読みごたえがあります。
PrimeReadingで無料で読めたので何となく読んでみた書籍ですが、意外(と言ったら失礼ですが・・・)面白かったのでシェアします。
では、ネタバレしないようにレビューしていきます。
- 登場人物
- 金融をテーマとした学園物
- おカネを手に入れる6つの方法
- 「ぬすむ」についての認識
- リーマンショックはなぜ起きた
- お金の借り方
- ではなぜ高利貸しが成り立つのか?
- 資本主義社会のお金に関する不公平感
- 信用創造というもの
- まとめ
登場人物
サッチョウさん(木戸隼人):お父さんは消防士の普通の中学2年生
ビャッコさん(福島乙女):町一番の大富豪の娘(実はお父さんは不動産、サラ金、パチンコ屋経営)
カイシュウ先生(江守先生):そろばん勘定クラブの顧問で身長が2mを超す巨体。謎が多い。
金融をテーマとした学園物
中学校を舞台にそろばん勘定クラブの顧問カイシュウ先生と2人の部員となった、主人公のサッチョウさんと大富豪の娘のビャッコさんを中心に金融に関して学びながらストーリが進んでいきます。
顧問のカイシュウ先生がまたキャラが強いのです。
世の中には必要悪というモノがあるという、そろばん勘定クラブ顧問のカイシュウ先生は著者の考えの象徴だと思う。
カイシュウ先生は普通の先生とは何か違う感じで、生徒のよき理解者のように見える。一方リアリスト(現実主義者)でもあります。
人間はおろかな生き物で、これからも戦争を繰り返すだろう。
ギャンブルや水商売も必要悪の側面があるという考えからうかがうことが出来ます。
物語が進むにつれてサッチョウさんとビャッコさんの関係がいかにも学園物という感じになってきます。
金融をテーマにして書かれた本なのでこのあたりは正直期待していなかったの分、新鮮だったというのが正直な感想です。
おカネを手に入れる6つの方法
- かせぐ・・・パン屋、会社員
- ぬすむ・・・パチンコ屋、高利貸し
- もらう・・・生活保護
- かりる・・・融資を受ける
- ふやす・・・投資
- ???
おカネを手に入れる方法は6つあり、世の中の仕事がこの6つの方法のどれに該当するのかという事を中心にお話が進んでいきます。
6つ目の「???」はお話のキモになる内容なのでここでは伏せておきます。
「ぬすむ」についての認識
パチンコ屋、高利貸しを「ぬすむ」に分類するということ。私たちも心の中ではもやもや思っていることではありますが、はっきりと言い切ってくれていてスッキリします。
テレビばかりを見ていると、この考えに至らないです。
テレビのCMを見ていると、かなりの頻度でパチンコ屋と消費者金融のCMが流れます。メディアというのは広告主にとって不都合な内容は発信しないのです。
なので、私たちはパチンコ屋、高利貸しをできれば使わないほうが良いと頭では考えていても、テレビというメディアに刷り込まれた認識で判断が鈍っているところがあります。
テレビ以外のメディア、書籍や最近ではビジネス系YouTuberの方が発信する情報では、
- パチンコ
- 消費者金融
- 宝くじ
この3つはやるな!というのは定番ですよね。
リーマンショックはなぜ起きた
2008年ごろから始まったリーマンショック。ニュースで聴いていて分かっているようで良く分からないこの事件も丁寧に説明されています。
アメリカのリーマンブラザーズという名門銀行がつぶれたことでリーマンショックは明るみになりました。
リーマンブラザーズや他の銀行が所得の低い人たちに自力では返せない金額の住宅ローンを貸しまくっていました。その結果、ローンを返せない人が急増した。
銀行は毎日、世界中でものすごい額のお金をお互いに貸し借りしています。
お金が足らない銀行が足らない銀行がお金が余っている銀行から借りる。その流れが止まったのです。
このあたりは私も何となく理解していました。しかし世の中の仕組みはもう少し複雑でした。
お金を貸したという取引自体を別の銀行や投資家に売り払ってしまう事を「証券化」といいます。証券化することで低所得者に返済できないような住宅ローンを貸し付けていた銀行家たちは自分たちのリスクを世界中に分散していたのです。
その結果どこかでほころびが起きたら連鎖的に損失が広がる網の目ができたのです。
儲けは銀行家、損は国民
という構図ができていたのです。
「ダニ軍団」と著書の中でカイシュウ先生は言います。
知らんかったー
お金の借り方
子供にお金の借り方を教えるって普通はしないですよね。
でも教えないから借り方を間違える。それって大いにあると思います。
私自身も、借金は良くないとわかっていますが、住宅ローンは自分も組んでいます。
子供に借金について分かりやすく説明する。難しいですよね。
借金という行為は一言で言うと「借り手の信用」となります。
貸したお金をきちんと返してくれるという信用があるから貸す方はお金を貸せるのです。
「100万円をカイシュウ先生から借りる方法を考える」という課題が出ました。
サッチョウさんとビャッコさんの二人は考えた結果、借りるべきではないと答えました。中学生の2人には100万円を借りた場合、利息分を返せない。そのような判断からです。
このやり取りはとても面白かったです。答えは一つではない。
借手によって答えは異なるのです。
ではなぜ高利貸しが成り立つのか?
これは市場の失敗が原因だと著者は述べています。
市場というのは合理的な判断をもった売り手と買い手が参加しないとうまく機能しない。
高利貸しの場合、借り手はまともな判断力を失っている。
これではまともな市場が成り立たない。貸し手は略奪的な金利を強要してしまう。
まともな判断力を失っている状態ってどんな状態でしょうか?
怖い人に脅されているとかは別として、知らないから判断を誤ってしまう。
これは避けたいところですね。
最近ではクレジットカードのリボルディング払いというのがありますが、これも仕組みを知らないと恐ろしいですよね。
年利15%とか・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
資本主義社会のお金に関する不公平感
株式や不動産への投資、この「かせぐ」につながる道は、十分な元手を持っている人、つまりある程度のお金持ちにしか開かれていないという事実。
ピケティの不等号 :r(資本収益率)>g(経済成長)
資本主義の世界はどう頑張っても、このような仕組みになっているようです。
r(資本収益率)というのは株式や不動産への投資のリターンの事を示します
g(経済成長)文字通り経済の成長です
つまり世の中は株式や不動産を持っている人がお金持ちになる仕組みになっているという事です。
この事実はなかなか受け入れがたい内容です。
一生懸命働けばお金持ちになれる。子供の頃はそんなことを漠然と考えていました。
そりゃぁ いい大学を出て、いい会社に入ってそこで頑張れば高い年収をもらう事ができる確率は上がりますが、今の時代は終身雇用も崩壊して会社が一生面倒見てくれるという時代ではありません。
こんな時代、こんな資本主義社会だからこそ、お金にまつわる力をつけることが大切なんだと思います。
信用創造というもの
創造ってなんかかっこいい。本書の主人公であり庶民代表であるサッチョウさんも同じことをいっています。
100万円の札束をA銀行に預ける。
bさんがそのうちの90万円を引き出しB銀行に預ける。
cさんがそのうちの81万をC銀行に預ける 。
ここで何が起こっているかというと、
A銀行は90万円ひきだされたが、預金座高は100万円のまま。
B銀行は81万円をひきだされたが、預金残高は81万円のままなので、市場全体の預金残化の合計は大きくなっていく。
銀行の残高って実際に現金がそこにあるわでではなく、数字のデータなんです 。
ただし、お金は銀行同士で貸す・借りるの流れが滞るとお金としての価値を失ってしまいます。
ざっくりまとめるこんな感じ。
まとめ
お金について学校では教えてもらえません。私が子供の頃がそうだったように、これからも小中学校ではお金について教わることはないでしょう。
家庭で教えるしかないのだろうか?
そもそも株式や不動産をあつかうことがない大多数の人たちは、金融のしくみについて知ろうとすることがありません。
私もそうでした。
ほんのつい最近つみたてNISAを始めて金融について興味を持ち、世の中のお金の流れについて勉強する機会を得ました。
知らないと、損していることも知らないなんてことになりかねません。
まず興味を持つ。そのきっかけに本書は役に立ちます。さらにお子さんがいる家庭はお子さんにもオススメできる本です。
子供はなかなかこの手の本に興味を持ってくれません。まずは親が興味をもつところからですね。
この記事は、はてなブログお題「我が家の本棚」について書きました。